ジョーカーを見た。泣きたい時に笑ってしまう男の衝撃・ネタバレなし感想
今日、試写で「ジョーカー」を見た。
確かにすごい映画だった。
70年代後半のザラ付いた感じのニューヨークぽいゴッサムシティ。
貧困層が増え、富はごく一部の富裕層が独占している。
そんなところは現代ぽい。
そしてホアキン・フェニックス演じるアーサー(ジョーカー)は、貧しくて優しい男。
障害を持っている。追い詰められたり、切羽詰まると笑ってしまうのだ。
それが妙な決まりの悪さを生み、ああ、よくないことが起こる、
どうなってしまうんだろう。。と見る者を不安にさせる。
だんだん、それがホラーになってくる。
悲しいんだけど笑ってしまう男。
コメディアンになりたいのだが、彼の笑いはどうしようもなく滑りまくる。
しゃべりだすとプレッシャーで笑ってしまう。
自分でしゃべりながら、笑って、しゃべれなくなり、観客のシラーという雰囲気に見てるこっちが耐えられなくなってくる。
そういう痛さが生々しい。
過激さはストーリーに勢いをつけるというよりは、痛々しいまま暴走する感じで、
この不幸な男を何とか癒してくれる存在はいないのか、
救いはないのかと切なくなりつつ、見守り続ける。
彼は自分の救いを妄想に求め、現実にはことごとく裏切られていく。
最底辺にいる男が、虐げられ続け、そしていつしか発狂するかのように暴走する。
そして社会の底辺にいる者たちがそれに同調していく。
70年代後半のある種、殺伐とした風景の中で起こる出来事は、
とても現代とリンクしているように見える。
カサベテスの「グロリア」のようなあの70年代的な感じ。
落書きだらけの地下鉄。
ゴミ溜めのような汚い街。
でも、それが昔見た、自分たちの手に届かない大都会のイメージだ。
それがすごくリアルに再現されていると思った。
そう。憧れのニューヨークはとても汚かった。
ホアキン・フェニックスじゃなければ成立しなかったジョーカー。
実際に、彼はこの脚本にたくさん口出しし、いろんなアイディアを詰め込んだはずだ。
ここまで底辺の人間の内面崩壊を描いた映画が、ヴィランを題材にしたヒーロー映画の範疇に収まるはずもなく、
そういう映画を期待して見に行くと、思い切りハンマーでぶん殴られたような、
裏切られたような気分になるかもしれない。
だけど、今作られているどんな映画よりも社会の醜さをえぐり出し、
内面の奥深くまで入り込んでいく心理描写。
まるで70年代や80年代のミニシアター全盛のころの映画に作られた映画のようでもある。
すごい映画だった。
P.S.
ロバートデニーロ、本当によく出てくれたなあ。
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