久しぶりに見た日本ドラマ。「日曜の夜ぐらいは…」の感想。
脚本は岡田惠和。
動画配信で何気なく見てみたら、結局8話まで一気に見てしまった。
そのぐらいはまってしまった。とにかくドラマの雰囲気がいい。
(無料動画配信では1~3話までしか見れなかったので、結局、全話U-NEXTで全部見た)
「日曜の夜ぐらいは…」
あるラジオ番組のオフ会イベントで出会った3人の女の子の話。
女の子と言ってももう学生ではなく、それぞれ仕事をしているが、
3人ともパッとしない報われない生活を送っていた。
(派手に遊んだり買い物を楽しんだりする女子とは真逆にいる子たち。
それがかえってリアル)
一泊二日の楽しいオフ会イベントだったけど、
連絡先を交換しても徐々にラインも途絶えがちになり、
やがて関係は消えてしまうだろう。それは悲しい。
だったら最初から連絡を交換するのはやめて別れよう、と1人が言いだす。
楽しかった思い出として留めよう。
残り2人はちょっとがっかりするが、その気持ちが分からなくもなく、同意する。
人生に期待が持てず、報われない日々を過ごしてきた経験から導き出された結論が寂しいけどなんだかすごくリアル。
ちょっとめんどくさい、という本音もあると思う。
どーせ自分の人生は何も変わらないんだし、新しい友だちを今更作る気もない、という無気力な感じ。
友だちにも期待しない。でも期待したくなる。
でもそれがうまくいかなくなったとき、そのがっかり感はダメージが大きい。
だったら現状維持のプラマイゼロでいい。
がっかりな思いはしたくないから、これっきりにしよう。
楽しい思い出だけで終えよう。
どこまでも消極的で、寂しい選択だけど、分からなくはない。
でも、そんな3人の閉塞感を一気に打開する突発的な「事件」が起こる。
イベント中に3人で買った宝くじが当たった。
独り占めすることもできたのに、律儀に3人で山分けすることを決めたのは、
連絡先を交換するのをやめよう、と言い出した岸田サチ(清野菜名)だった。
できそうで、なかなかできない意外な選択。
3人は別々に1千万を持ち帰り、慎ましくも幸せに生きようとするが、
ずるずると何でもないことや、毒親にたかられたりして残金をずるずる減らしていく。
そして3人がまた集まり、それぞれの身の上話を夜通し始めるのだった。
ここから物語が動き出す。
「報われなかった3人の女の子が共同でカフェを持つ」
そんな夢が少しずつ叶えられていく過程を描いていくのがこのドラマの背骨だけど、
実は隠しテーマは「集まって暮らす」ということなのではないかと思う。
だんだんみんなが住まいを移してくるのが、サチと母親が慎ましく暮らす団地。
小洒落たシェアハウスとかではなく、団地というところがとてもいい。
どこにでもある昭和な普通の団地だ。(謎のパンダの置物あり)
この先、カフェという同じ職場で働きつつ、暮らしの拠点も同じ団地。
みんなが集まって共同体のように互いを補いながら協力し合って生きていく。
それって今の時代、最高の贅沢に思えてならない。
こんな豊かな生活ってあるだろうか。
そんな「新しい暮らし方の提案」が大胆にもされているドラマだと思う。
実はそれがこのドラマが描きたかった大きなテーマだ。
孤独じゃないってことがどれだけ大事か。
気の合う仲間ができるってどれだけ豊かなことか。
そんなことに気付かせてくれるドラマだ。
優しい人の集まり。
そこには自分を邪険に扱う兄弟や、毒親はいない。
市川みね(岡山天音)やカフェプランナーの住田賢太(川村壱馬)も優しく思いやりがある。
3人にとっては異性だが、9話でついに「みね禁法」が成立する!
(最初はそんなの必要ないだろうと思ったけど、
みね君の熱い思いを3人に訴えたシーンでは、もしかして必要かも!?と思ってしまうところが熱い。
序盤、この男性2人(みねと住田賢太)が実は裏切るのではないかとヒヤヒヤして見ていた。
みねにお金を管理してもらう、とか言い出したときにそれって絶対騙されるやん!と思ったし、
イケメンのアドバイザー賢太も何か裏があるに違いない、と。
手付金を入れさせたらばっくれるんじゃないか?と。
でもこのドラマはそんな展開でドラマを転がそうとはしなかった。
それが本当にホッとした。
報われない子たちがせっかく見つけた小さな幸せを破壊すべく、
さらなる障害が現れて、その夢が頓挫しそうになるのを何とか乗り超えていく、
というような波瀾万丈型でドラマを進めなかったのは大正解だと思う。
サチにたかる父親(尾美としのり)や、
若葉(生見愛瑠)にたかる母親のまどか(矢田亜希子)も小さなスパイス程度でしかない。
(8話で矢田亜希子の撃退に成功したっぽい)。
追記:(そして9話でサチの母がサチの父撃退、説得に成功したっぽい)
そこで何か計算外の事件が起きて3人の計画が危機的状況になる、
という方向のドラマを誰も望んでいない気がする。
ドラマは対立とか障害とか主人公に立ちはだかる敵の存在がないと、
うまく話が転がらず、平板で退屈な話になってしまうと思われがちだ。
実際、このドラマにそういう劇的な展開がないから退屈だ、と思う人もいるとは思う。
でも序盤でこの子たちの報われない生活は十分描いていた。
確かに宝くじが当たる、というのは誰にでも起こる事ではない。
でもこのドラマは夢を叶えるため、3人でコツコツお金を貯めて……
という過程を描くより、もっと別のことを描こうとしている。
それが集って生きる、ということだと思う。
気の合う仲間が共同体のように集まって暮らし、
共同でカフェを経営する。
それはとても今風の素敵な提案だと思った。
見ている人の中には、サチ(清野菜名)や翔子(岸井ゆきの)、
若葉(生見愛瑠)のような友だちが欲しいと思った人もいるだろう。
(今までの彼女たちのように、友だちを作らずに暮らしてきた人も実は多いと思う)
そこに、みね(岡山天音)や賢太(川村壱馬)のような穏やかで
中性的な男の仲間が加わるのもいいな、と。
車椅子生活のサチの母親の邦子(和久井映見)も穏やかで優しく、理解がある。
若葉(生見愛瑠)の祖母の富士子(宮本信子)も今までの悔しい思いや無念さを捨て去り、協力しながら生きていく。
過去の出来事で臆病な生き方しかしてこなかった優しい人たちが、
集まりながら生活し、一緒に夢のカフェを運営していく。
些細な夢のように見えるけど、これはとても大きなみんなの憧れの生活ではないのか?
彼女たちの生活を見ていると、本当に羨ましいなと思えてしまう。
それは湾岸のタワマンで暮らすよりずっと魅力的に見える。
このドラマはそんな新しい生き方を提案することに成功したのだと思う。
最終回まで楽しみだが、
こういう彼女たちの生活にどっぷり浸ってしまうようなドラマは、
終わったときのロス感が半端ないことも知っている。笑
なので、定期的に特番で描いて欲しい。
確かにそういう意味では、十年ぐらい前のドラマ、
同じく岡田惠和脚本の「最後から二番目の恋」も集って暮らすに近かったな。
あのときはみんな職は違っていたから、それをさらに発展させたのが
「日曜の夜ぐらいは…」なのかもしれない。
「日曜の夜ぐらいは…」全話配信中!
「日曜の夜ぐらいは…」